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シカ・イノシシなどの狩猟鳥獣を生け捕りにする利点とデメリット

シカ・イノシシなどの狩猟鳥獣を生け捕りにする利点とデメリット

前回の記事で紹介したように、狩猟の捕獲方法として、にわかに生け捕りのブームが起きています。が、動画を見ていると賛否両論のコメントで、まだまだ議論が必要なフィールドなのかな、と思います。

そんな中で、私なりに考えていること、それなりにまとまっていること、を紹介したいと思います。

そもそも生け捕りのメリットとは?
放血の是非とそのメカニズム
温度と細菌増殖のスピードの関係
血抜きの最適な方法?
生け捕りのデメリットとは?

そもそも生け捕りのメリットとは?

最大のメリットは、止め刺しを行う場所を好きに選べる点にあります。捕獲地での止め刺しは、水道施設が無い・不衛生・道具の不足・足場の確保困難、などの環境が足かせとなり、安定した肉質の確保が難しくなります。

猪の足を縛る風景

その点、生け捕りさえしてしまえば、上記のような環境に左右されず安定した場所での止め刺し・解体作業が可能となります。

もうひとつのメリットは、動物を興奮状態から落ち着かせることができるという点です。特にくくり罠にかかった個体などは、死にものぐるいで暴れまわるため、全身に血が巡ってしまい、体温も上昇してしまいます。一般的に、肉は体温以上の高温状態に長くさらされると肉質が落ちると言われます。

その点、拘束・目隠しされた獣は、たいていがおとなしくなるので、平常脈・体温に近い状態から止め刺しを行うことができ、また必要以上に恐怖心・痛みを与えることがありません。

放血の是非とそのメカニズム

ここで論点となってくるのが、放血の方法とその是非についてです。結論から言えば、血は味を構成する重要な要素であって、必要以上に嫌うものではない、ということです。

いやいやいや、血は臭いだろう、という声もわかります。が、それは「腐敗した血」の味なのです。そもそも血の味が絶対悪であるならば、ソーセージやシヴェのような料理が存在するはずがないのです。

じゃあ血抜きしなくていいじゃん、という話にもなりがちですが、そうでもなくて。

温度と細菌増殖のスピードの関係

心肺が停止した生き物の血液内に混入した細菌は、またたく間に全身へと増殖します。基本的に細菌は30〜40度あたりで猛烈な速度で増殖します。ですので、止め刺しなどの際に血管内へ入り込んだ細菌は肉内部の毛細血管まで容易に広がってしまうのです。これが俗に言う「臭い肉」の原因です。厳密に言えば酸化状態も絡んでくるのですが、そこは置いときます。

極端を言うと、止め刺し直後から口に入るまで、氷点下・脱酸素状態を保てば、血は臭くなりません。しかし、そのような現場はまず身近にありませんし、体全体の体温を一瞬で氷点近くにすることはまず不可能です。

なので、よほどの施設がない限りは、抜けるぶんは抜こう、止め刺しなどで外傷が発生したらすぐに冷蔵しよう、がほぼ正解に近いやり方だと思います。

血抜きの最適な方法?

知人の外科医に「全身から血をなるべく抜くとしたらどのような方法がよいか?」と聞いたところ、逆さまに吊る → 頸動脈の切開 → 手足の動脈静脈を切る、が一番抜けるだろうな、と伺いました。この方法の利点は、拍動が止まっていてもそれなりの効果が見込めるところです。重力に頼るため、そもそも心臓ポンプの必要がありません。さすがお医者さん、的確すぎる答えに膝を打ちました。

なお吊るさずに心臓を刺すと、出血した血が胸腔内に貯まり、体外へ出すタイミングが少し遅れます。特に罠の現場で心臓止め刺し → 持って帰って開腹、すると、胸腔内で血が固まって残ります。それほど大きな問題ではありませんが、内臓を食する方は避けたほうが無難です。

まとめると以下。

ベストケース(生死問わず)
逆さまに吊る → 頸動脈切る → 手足の動脈静脈切る

ベターケース
拍動あるうちに頸動脈付近を切る

となります。

いずれにせよ、解体直前まで拍動していることが重要なポイントで、その意味では生け捕りは是である部分が大きいです。

生け捕りのデメリットとは?

捕獲時にある程度の技術と道具と胆力を必要とします。また、捕縛時には密着しての接近戦となりますので、怪我の可能性、マダニの寄生、などがリスクとなります。

また目隠しをするとはいえ、搬送時には多少暴れることもあるので、車載の際に手こずることもあります。

まだまだ不確定な要素もありますが、現時点ではこれくらいでしょう。引き続き勉強に励みます。

カテゴリー: 狩猟の道  
ライター:島田寿朗

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