街から始める鳥獣対策

年間200頭を仕留める、単独忍び猟で有害鳥獣駆除を行う東良成(@りょう)さんに同行インタビューしてきました – その3

年間200頭を仕留める、単独忍び猟で有害鳥獣駆除を行う東良成(@りょう)さんに同行インタビューしてきました – その3

前回の続きです。

初日に感じた、私の同行による足手まとい感が的中。2日目の朝イチ、合流とともにりょうさんは申し訳なさそうに伝えてきた。

「すいません、合流前に流しで仕留めちゃいました」

単独で行動していたというサルが一匹荷室に収まっていた
単独で行動していたというサルが一匹荷室に収まっていた

なんと合流前の朝、流し猟ですでにサルを1匹仕留めてしまったのだ。欲を言えば現場に同行したかったけど、なにせ捕れることが第一優先なので、これはこれで嬉しい。良かったですね、と伝えるが、しかし裏腹にりょうさんの表情は少し険しい。

「行動がおかしかったんですよね。グループに属していなかったし、世代交代で追い出されたボスとも挙動が違う。この若さで単体行動の理由が分からないんです」

うん、やっぱり何を言っているのかよく分からない。

ともあれ、取材のプレッシャーを多少感じていたところもあり、やや安堵した表情も見れました。

「では記録用の写真撮って、埋めに行きましょうか」

「そうですね、お願いします」

その瞬間、隣の山からサルの鳴き声が響いた。

「群れですね、行きましょう」

迷いがない、早い
迷いがない、早い

なるべく邪魔をしないように、りょうさんと呼吸を合わせて追従する。そこにはすでに狙撃のポジションを取った姿があった。

相当打ち上げの位置

しかし相当打ち上げの位置だ。私からサルの姿は見えないが、ここは小さな丘のようになっていて、すぐ尾根があるのでバックストップがない。そのため引き金を引けないのだろう。

10分くらいの膠着後、りょうさんは銃を下ろし、プレッシャーをかけつつ追跡を始めた。

相変わらず早い、音がしない
相変わらず早い、音がしない

徐々に山頂付近へ移動しながら、サルたちが群れていた地点に到達する。かじられた柿が地面に散らばっていた。

食べられていた柿を調べる
食べられていた柿を調べる

「朝ごはんでしょうね。ちょっと距離が離れたので様子を見ていきましょう」

道路に戻り周囲を見回していると、かなり離れた山の中腹から(500mくらい?)警戒鳴きが聞こえた。こちらからはまったく目視できない。けど当然彼らはこっちを補足している。戦で言うと完全に負けの体だ。よくもまあこんな連中相手に白星をあげられるものだと感心してしまう。

とりあえず山の手前まで移動し、かなり遠くからポジションを取る。

「顔さえ見えれば、この距離だったら仕留められると思うんですけどね」

と言うが、鳴き声は聞こえどもその姿は見えない。しかし徐々に群れが山越えしていく様子が物音から伺える。

結局この群れは仕留めることができなかった。

緊張を解き車に戻り、とりあえず埋めに行きましょう、ということになり、埋める場所を探しがてら、箱罠の見回り、流し、を同時進行しつつ移動することにしました。

仕留めたサルを車に運ぶ

しかしやはり単独行動していたサルに対しては合点がいかないようで、悩んだ表情のまま移動を続ける。

行動がおかしいんですよねぇ、と
行動がおかしいんですよねぇ、と

ひととおり箱罠の見回りが終わり(この日も罠の成果は無かった)、朝に仕留めたサルを埋めに山の中に入ることにした。

朝に仕留めたサルを埋めに山へ
朝に仕留めたサルを埋めに山へ

余談、これは私も経験あるから分かるんだけど、この埋設処理が地味に大仕事で、報奨が出るにしても、なんとか改善していただきたい部分でもある。50kgを超えるイノシシなどになると一日がかりの大仕事になってしまうのだ。軽く腰も破壊される。

丁寧に埋めていく
丁寧に埋めていく

ともあれこの日は山が静かで、流しでの目撃が皆無だったので、午後に忍び猟で山へ入ることにした。

合間にtwitterで報告する姿
合間にtwitterで報告する姿

「考えても分からない時は、とりあえず山に入るしかないんですよね」

そう言って山へ入っていく姿は、どこか嬉しそうでもあった。未知だからこそ試してみたい、情報を収集したい。最近では全国の猟師とtwitterで交流することがモチベーションに繋がっているのだという。

段々と私にも距離感が掴めてきて、りょうさんが足を止める雰囲気もなんとなく察知できるようになってきたころ、山中で明らかに緊張感が走る。足を止めて構えている。ゆっくりと照準が追従し始めている。私から動物は見えないが、バックストップは確保できる地形だ。

ドォン!

発砲した。そして続きざまに、

ドォン!

山に轟音が響き渡る。引き金を2回引いた。

同行して初めての発砲音
同行して初めての発砲音

銃を下ろし、歩き始めたのを確認してから、仕留めましたか? と聞いてみる。

「シカですね、2頭。ひとつは走って行ってしまったので後から確認しに行きます」

今は有害鳥獣の捕獲期間ではないので、シカに対する補助金は出ない。しかし近隣の農家の方から「捕ってほしい」と頼まれているので、見かけた場合は仕留めるしかない。

転がり落ちた1頭目のシカ
転がり落ちた1頭目のシカ

この頃には結構な山中まで来てしまっていて、丸ごと持ち帰ることはできないので、その場で解体して埋設することにした。

不安定な場所でも手際よく解体する
不安定な場所でも手際よく解体する
近くに小川が流れている
近くに小川が流れている
解体後山の中に埋設していく
解体後山の中に埋設していく

「もう1匹も当たっているので、血痕を探しながら追いかけましょう」

解体した肉をリュックに詰め込み、すぐに追跡を再開する。りょうさんは山に入ると、明らかにスイッチが入る。本人は「迷いまくりですよ」と言うが、ひとつひとつの判断の早さが凄まじい。罠師とは明らかに違うスキル、異なる判断回路を持っている。

1匹目の解体現場から100メートルほど歩いた地点で、

「いましたー」

指し示す方向に巨大なシカが転がっていた。パッと見、50kgは超えていたと思う。大きなメスだった。

これもバラしますね、と
これもバラしますね、と
処置の早さたるや
処置の早さたるや
このお肉は後で知り合いに持っていきますね
このお肉は後で知り合いに持っていきますね

解体が終わり埋設が終わった段、さすがに気が緩んだのか、

「すいません、ちょっと休憩しますね」

一気に全身から力を抜いてリラックスモードに入った。

それもそのはずだろう。自然の獣相手に気取られない足取り、気配消し、視野からの情報処理、引き金を引く覚悟、解体・埋設 x 2。

今日の仕事は終わり、というモードになったので、色々お話を伺うことができた。軽く談笑しながら、にわかに信じがたいエピソードを聞かせてもらった。

  • しつこく追いかけるとサルがイラついてきて、こっちに岩を転がしてくる。
  • 5時間追いかけても補足できなかったサルが、帰宅したら屋根の上で待ってた。
  • 箱罠の扉をノーモーションで5メートル以上ぶっ飛ばすイノシシ。
  • 仕留めたシカの運搬用に軽トラ借りて戻ってきたらイノシシがシカの死体を食べていた。
  • 箱罠で血抜きしたシカの血をエサに翌日イノシシがかかる。

日々試行錯誤しているだけあって、聞いたことのない狩猟話がてんこ盛りだった。

この日はこのまま山を下りることになったのですが、その帰り道。

「同じ道は歩きたくないんですよね」

曰く、今来た道はもう情報収集が終わっているので、違う道を選びたい。他の情報と接したい、と。どこまでも研究熱心な姿勢だった。見習うべき点だ。

少し迂回しながら、来た道とは違う道程を選び、車に戻った。ちょっと知り合いの家にシカ肉を届けますね、と言って近くの民家に車を止め、冷蔵庫に肉を届ける。

留守だったので肉だけ冷蔵庫に置いていく
留守だったので肉だけ冷蔵庫に置いていく

近隣の方との付き合い話をしていると、猟友会の分会長さんが偶然通りかかって、しばらくお話を伺った。

「あすこの箱はよぉ〜、○△×でなぁ、○××○△×だぁ」

うん、何言ってるかほとんど分からない。余談、私が属している静岡の分会の方々も未だに半分くらい何を言っているのか分からない。

方言全開コミュニケーション
方言全開コミュニケーション

感じたのは、りょうさんはこの土地で大きな期待を持たれているということ。とても好かれているということ。年齢のギャップを超えて溶け込んでいること。私はそのような覚悟をもって狩猟世界に身を置いていないので、ただ素直に凄いな、と感じました。

しかし現実は厳しい。限界を超えた限界集落に身を置いても、そこに未来はない。どう見積もっても日本人口は減少の一途を辿る。あと20年のうちに、全国市町村の半数以上が消滅可能性都市になると言われている。

もちろんどんな道を選択するかは個々人の自由だし、私も自分の道を選び続けるだけで精一杯だ。悲観的になるのではなく、現実を指し示すデータを正面から受け止め、その上で我々が成すべきことは何なのか。自問を止めることは許されない時代に突入している。

今日もりょうさんの試行錯誤は続いていく。

カテゴリー: 狩猟の道   鳥獣トラブル  
ライター:島田寿朗

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