街から始める鳥獣対策

年間200頭を仕留める、単独忍び猟で有害鳥獣駆除を行う東良成(@りょう)さんに同行インタビューしてきました – その2

年間200頭を仕留める、単独忍び猟で有害鳥獣駆除を行う東良成(@りょう)さんに同行インタビューしてきました – その2

「僕の師匠は猫なんですよ」

笑いながらりょうさんは言う。僕も肉球が欲しいんです、と。

普段は基本的に2パターンの狩猟をしていて、ひとつは流し猟。車で移動しながら耳と目で怪しい場所を周回してチャンスを探っていくタイプ。もうひとつは忍び猟で、こちらは山の中に入り込んで動物との駆け引きや不意打ちで仕留めていくスタイル。

単独忍び猟をするにあたっての大きな障壁は、「いかに獲物に近づくか」であって、道具だよりな方法ではなく、身の運び方と考える力だと、同行してて切に感じた。そのための師匠として猫を選び、彼らの行動を見て学習しているのだとか。

実際、りょうさんの道具周りに珍しいものは見当たらなかった。猫の足取りを参考にして使用している靴は、ワークマンの680円のものだ。銃もスコープも特別高級な物を使用しているわけではなく、銃弾に至っては自作している。

注意深くリローディングする様子
注意深くリローディングする様子

「決まった答えってのはなくて、常に自問し続けることが最適解だと思っています」

そんな言葉の重みとともに、一緒に山の中に入らせてもらった。

山に入ると佇まいが変わった
山に入ると佇まいが変わった

山に入って10分ほど、少し歩いたところの左前方、枝の動く気配がした。しかし私の目から動物の姿は見えない。同時にりょうさんは素早く音もなくしゃがみ込み、照準を合わせていた。

しゃがみ込み、照準を合わせる

動物の気配がする。だけど引き金は引かない。当然動物もこちらの動きに気付いている。しばらく睨み合いが続く。そうしている間にも照準はゆっくりと追従しながら動き続けていた。

動物の気配が去り、しばしの沈黙のあと、りょうさんは発砲せず腰を上げて緊張を解いた。

「サルが7頭、シカが2頭。グループでしたね」

えぇええええ! 私には1頭も確認できなかった!

「見えなかったぶんも含めると、サルは20頭近くだと思います」

私には視認すらできないこの距離で、取得する情報量の違い。裸眼でも訓練次第でここまで違いが出るものなのかと驚愕した。

しかし今回は運悪く、確実に仕留める瞬間が訪れなかったため見逃すこととなった。尾根付近を移動している動物は、バックストップが無いため(弾が飛んでいってしまう)そもそも発砲できないのだ。

だがここから追い込みをかけていく。

付近の地形と彼らの行動パターンを把握しているりょうさんは、時に早足に、時に立ち止まりながらプレッシャーをかけて、彼らの行動範囲を潰していく。ぶっちゃけ途中から私の足手まとい感が半端なかった。

りょうさんはほとんど振り返らない。というか同行中、1回も振り返らなかった。それでも背中越しに感じた、素人の私の足取り、それを考慮してくれながらの移動、且つ前方の獲物へのプレッシャーがけ。言葉や写真にできない膨大な情報のやりとり。後ろからついてくる人間くらいは見なくてもその状態が分かるのだと、あとあと理解した。

山の中で少しキュンキュンした。

プレッシャーをかけながら時折立ち止まる姿

追い詰めながら時折情報を話してくれる。グループは分断させたほうが仕留めやすくなる。ここから向こうに行かれると負けです。今は寝屋に帰るまでもうひと遊びする時間帯なのでもう少し粘ります。

うん、高次元過ぎて何を言ってるのかよく分からない。

音もなくスルスルと移動していく
音もなくスルスルと移動していく
立派なヌタ場を通り過ぎる
立派なヌタ場を通り過ぎる

結局このグループは途中で見失ってしまい、仕留めることができなかったので、車に戻り付近の箱罠の見回りへシフトすることにしました。

しかし移動をメインにしながらも、道端の変化を拾いつつ、時に車を下りて確認しつつ、動向をインプットしていく。

昨日は無かったというイノシシの跡昨日は無かったというイノシシの跡

箱罠に関しては色んな試し方をしているようで、場所によってその仕掛け方法を変えて相手の出方を伺ってるとのことでした。味噌を使う、醤油をまいてみる、見回り時に全く近寄らないタイプ、など。

個人的に面白かったのが、トリガー用のワイヤーに釣具のPEラインを使用していたところ。ほとんど目視できず、かつ金属やテグスのような光沢もない。警戒されにくそうで、コレは是非パクらせて参考にさせていただこうと思いました。

サル用の箱罠、入り口までは来ている
サル用の箱罠、入り口までは来ている
シカ・イノシシ用仕掛けの調整
シカ・イノシシ用仕掛けの調整
釣具を参考にしているという手作りフック
釣具を参考にしているという手作りフック
罠付近の撒き餌
罠付近の撒き餌

いずれの試みもりょうさんは情報をオープンにしている。曰く、真似してもらっても全然構わないとのこと。興味ある方はtwitterでフォローすると分かる。何を隠すでもなく、淡々と毎日つぶやいている。

それからこの日は移動中にシカを2頭、サルを1頭、流しで発見したが、いずれも発砲の段階まで近寄ることができず、この日は終わることとしました。

相手は自然なので仕方ないですよ、明日捕れたらいいですね、と伝えてこの日は解散しました。

そりゃあ捕れてくれたほうがこちらとしては嬉しいけれど、たった1日でそんな上手くいくはずもなく、むしろ多人数による巻狩り + 犬を利用したって、猟果を出せないのが珍しくもない世界なのだ。加えて私のような素人の同行は普段と勝手が違うだろう。

そして翌日の朝イチ、合流するやりょうさんの口から出た言葉が。

ごめんなさい、落ち合う前に流しで仕留めちゃいました

つづく

カテゴリー: 狩猟の道   鳥獣トラブル  
ライター:島田寿朗

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